2014年12月7日日曜日

White Hunter Black Heart1990
クリント・イーストウッドの映画は勧善懲悪で単純明快
最近、頓に語り口の旨さが師匠のドン・シーゲルや
セルジオ・レオーネを越えたと言われる。
しかし此の映画はアクション物でもスリラーでも無いから
彼の作品の中では異色と言える。
ストーリーは名作「アフリカの女王」の製作エピソード。
その映画の脚本家ピーター・ヴィアテルが
監督ジョン・ヒューストンをモデルに小説にしたものの映画化だ。
ヒューストンといえば数々の映画史上に残る
名作を作ったハリウッドの大先輩監督。
イーストウッドは、かのヘミングウェイにも似た
ヒューストンの豪放磊落な生き方に憧れている様に思える。

ロケ現場で監督の役割は総てを仕切るボスであり
誰もが、その指図を待っている訳だが
此の映画のヒューストンはナント撮影を始める前
象狩りに出かけてしまう。
アフリカにロケを選んだのは映画の撮影ではなく
象狩りに来たかのようだ。
自らをモデルにしたと思われる脚本家の目線で捉えた
監督ジョン・ヒューストン像は、只の我侭な人間
象狩りに魅せられた狂気の男として描かれる。
そんな男でもイーストウッドが演じると
見事にハマリ、さすが本物の監督だわいと納得。
前半のエピソードでユダヤ人差別や黒人差別をする奴に
断固として戦いを挑む監督が
自然動物愛護と矛盾する象狩りに執着する事を
一つの謎解きとして此の映画は進み
「ホワイト・ハンター。ブラック・ハート」の
題名の由来とも云えるクライマックスの悲劇へと導く。
その悲劇とは彼が無茶をして象に挑み
その挙げ句に、彼と心が通った象狩りのガイドが
彼を守るため、襲って来た象に殺されるのだ。
此れは彼が映画と云う”祭り”の生贄として
象を捧げようとしていたはずなのに・・・
私の勝手な解釈。
”白人の狩人は黒い心”とトーキング・トラムが鳴り響き
ガイドの家族たちの嘆き悲しむ声を背に
呟く様に「ア・ク・ション・・」と撮影をスタートさせる
イーストウッドの声は弱く暗い。
映画も、そこでプツンと終わる。

原作のピーター・ヴィアテル他4人で
良く練られた台詞は、登場人物それぞれの性格を
見事に生かし、又俳優も巧いので
単なる映画製作の内幕を暴露したと云うのでは無く
そこに生きる人間模様がそれぞれ丁寧に描かれて
カンヌ映画祭でパルムドール候補になったと
云うのも頷ける。

なんだか無性に元ネタの「アフリカの女王」が
観たく成って来た。

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