2014年3月26日水曜日

センチメンタル・アドベンチャー
Honkytonk Man(1982)
まったく配給会社のセンスを疑う酷い邦題である。
原題の「ホンキートンクメン」は
カントリーの歌詞によく使われ
調律してないホンキートンク・ピアノに象徴される
調子はずれの男という意味だろう。

上の写真クリント・イーストウッドの脇に居るのは実の息子カイル。
今はジャズ・ベーシスト兼作曲家となり
「ルーキー」「硫黄島からの手紙」「グラン・トリノ」等
映画音楽を手がけている。
此の映画は当時13歳のカイルを可愛くてしょうがない
父親のクリントが、甥という役で共演させた
ファミリー・ムービーなのである。
ファミリーといってもアウトロー役が似合うクリントだから
家には落ち着けないヤクザな流れ者の歌手
ギター片手にオンボロ車に乗って
カントリーの祭典グランド・オープリーを目指し
その途中、妹の家に立ち寄った処で
大恐慌に田畑を捨てカリフォルニアに移住するという
家族の事情に、此の甥を車の運転手として雇う。
息子カイルは、それまでクリントの映画に
チョコチョコ非クレジットの子役で出てはいたものの
本格的な映画出演に流石にギコチ無いが
それでも”DNA”と言うのだろうか?何とかこなしている。
此の映画はナッシュビルまでのロード・ムービーなので
その途中、様々な人との出会いと別れがあり
主人公は借金の取り立てに立ち寄った相手に騙され
強盗にまでされそうになるが、此の甥の機転に助けられ
何とかオープリーのオーディションには間に合う。
”バディ・ムービー”の体裁も有る。
しかし歌っている途中で血を吐き倒れる。
彼は既に肺結核の末期だったのだ。
それでもオーディションを見ていたレコード会社から
その歌手としての力量を認められスカウトされ
初のレコーディングとなる。
医者の反対を振り切り最後の力を振り絞って
歌い終えた処で、彼は・・・と
まあ泣かせるストーリィ、良い脚本である。
此の頃イーストウッドの演出は、まだ、それ程巧くない。
特に自分の息子の演出には甘い。
そして映像もカメラ・アングルや光線など緩くて
後の「許されざる者」や「マディソン群の橋」に比べると
レベルは、かなり落ちる。
それでも此の映画に魅力が有るのは、
クリントの息子に対する”愛”が画面に満ちあふれている事だ。
子供の運動会に夢中でカメラを回す
親バカのお父さんとは違い
映画を通じてカイルにギターと歌を教え
”本当の男”の生きざまが何たるかを伝えている。
映画の中で一緒に作曲する場面は、彼等の現実と重なり
「俺は家庭には向かない・・・」と呟くのは
此の頃クリントが妻(カイルの母)と、うまく行ってなく
此の後、離婚する言い訳の様にも聞こえる。
クリント・イーストウッド。
TVの「ローハイド」からスタートし
マカロニ・ウエスタンの「荒野の用心棒」
「ダーティー・ハリー」シリーズと人気は衰えず
現在までに5人の女性との間に7人の子を作り
サンフランシスコとL.Aの間の町カーメルの市長まで勤め
オスカーの監督賞を2度も取り
音楽が大好きでチャーリー・パーカーに憧れ
「バード」という音楽映画も監督し
様々な楽器もこなすジャズ・プレイヤーでもあり
自らの映画に音楽も作曲している。
今なお映画の面白さを追求している彼は
本当のホンキートンク・マンどころかスーパー・マン
私のヒーローだ。

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