2013年12月3日火曜日

明かりを灯す人
キルギス映画である。
キルギスという国が元ソ連領だという事は何となく知っていたが
中央アジアのどの辺りに在るか?解らなかった。
カザフスタン、中国、タジキスタン、ウズベキスタンに
囲まれた天山山脈の麓の国だそうだ。
そんな日本から遠く離れた国から
素晴らしい作品が届いた。
監督はアクタン・アリム・クバト
なんと主演までしている。
まったく初出演とは思えない程、演技が自然で
凄い名優なのか、上手に素人を使っているか
まさか監督本人とは最期まで気が付かなんだ。
上のヴィデオの通り
その風貌そのままの人の良い電気工が主役。
金持ちからは料金は取るが
村の貧乏な家には無料で電気を繋げてやる男の話だ。
”赤ひげ”か?”ロビン・フット”か?
それは非合法だから冒頭から警察につかまるが
運良くキルギスの政治が不安定で
簡単に釈放される。
釈放され、家に戻り、女房にタライで
身体を洗ってもらう場面が、なんとも微笑ましい。
新政府の選挙に立候補する男の登場や土地の買収と
此の貧しい村にも大きな変化が起きる。
それでも此の電気工はマイ・ペース。
彼の夢は風の強い谷に風力発電を作る事と
今は幼い娘4人だが、次は男の子が欲しい事。
だから近所の小さな男の子が山の向こうが見たいと
高い木に登り降りられなくなったのを
危険を顧みず助けてやったりする。
とにかく皆に愛され頼りにされている男なのだ。
それを利用しようとする政治家に騙され
中国から来た投資家の宴会に参加するも
村の若い娘が、その中国人を色仕掛けで接待するのに
耐えられず、その宴会を無茶苦茶にしてしまう。
その挙げ句、怒った政治家にリンチを受け
半殺しで川に捨てられる処で映画は終わりかと思ったが
突然吹いた風に発電機の風車が回り、電球に灯がともり
自転車を漕ぐ男の足下のアップでラストと成る。
此の監督はラストに希望を持たせたのだ。
原題は ”Sviesos vagis=明かり”と云うらしい。
社会主義崩壊後、低迷するキルギスという国の今の情況に
何とか光を見い出そうとする作者の意図が
此の映画には熱く感じられる。
そして我々日本人に良く似たモンゴロイドのキルギス人
その大らかな暮らしのユーモラスな描写が
私たちが忘れている本当の幸せとは何か?を思い出させてくれる。
中央アジアの民族楽器を散りばめた音楽も何処か懐かしく
モンゴルのゲルと似たフェルトのテントの組み立てや
騎馬で羊の奪い合いする競技と
興味深いエピソードを絡めた巧みな構成は
此の監督の才能が並の物ではなく
更に彼の次なる作品の展開を期待させる。
キルギスの監督アクタン・アリム・クバト
この名前を覚えておこう。

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