2013年1月5日土曜日

(日本映画・男優編)
伊藤雄之助(1919~1980)
此の馬のように長い顔は一度観たら忘れる人は居ないだろう。
浅草生まれ、4歳で初舞台を踏んだという長い芸歴だが
実生活は家の倒産や太平洋戦争で陸軍に応召と波瀾万丈。
歌舞伎からリアリズム現代劇とめまぐるしく舞台も代わり
市川崑の「プーサン」で監督共々高い評価を得た。
とにかく、その日本人離れした癖のある容貌に演技は
先の市川のみならず、黒澤明、増村増造、木下恵介、鈴木清順と
多くの巨匠たちに愛され、その優れた作品で重要な役を演じていた。
特に私の記憶に残っているのは山本薩夫の「忍びの者」で
伊賀と甲賀両方の忍者を操る元締めの演技が不気味だった。
川島雄三の「しとやかな獣」で他人のアパートに転がり込んで
居座る家族の父親役が面白かったし
ゴジラこと長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」で
バスジャックして皇居に突入しようとする狂人の演技は
鬼気迫るものがあった。
此のシリーズは脇役の名優たちを取り上げているのだが
彼の場合、脇役というより、どれも主役を食ってしまう
演技の凄まじさが有った。

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