Into the Wild
BSに”東京ごはん映画祭”というのが有り
「青いパパイヤ」「ディナー・ラッシュ」「恋人たちの食卓」と
食欲をそそるような映画を毎週出してくれているのだが
此の作品が何故、入ったのか?まるで理解出来ない。
それというのも此の映画予告編で紹介している通り
名門大学を卒業後、既成の価値観を捨て
”イントゥ・ザ・ワイルド”と荒野を目指した若者の話だから
全くグルメのグの字も出て来ない映画なのだ。
俳優ショーン・ペンが実話を元にしたノンフィクション小説
「荒野へ」を自ら脚本を書き映画化した。
此の予告編で概要は語られているので省くが
ティーンのアイドルに成れそうな甘い顔の青年が
旅の途中、様々な人々の出会いで
どんどん、生きる目的の様なものを見いだし
その容貌まで変わって行くのが巧い。
それを効果的にしているのが編集。
(2008年のアカデミー編集賞の候補にも成った)
現在過去とフラッシュ・バックし、時にマルチ画面で
同時並行する時間は、彼の過去と現在の対比を強調して
とかく単調になりがちな物語に斬新なテンポを作っている。
そして、助演賞候補にも成った老優ハル・ホルブルックを含む
登場人物たちの描き方。
それぞれ過去に傷を負い、癒されぬまま人生を送っている人々が
主人公との出会いで、何かを得て立ち直って行く
そう、互いに生きる喜びを見いだして行くのが素晴らしい。
彼の行動は所謂、1960年代の体制に反抗し
ドロップ・アウトしたピッピー世代と良く似ている。
しかし、彼の反抗は実の両親との確執から来ている。
欺瞞に満ちた生活を送る彼らからの決別が旅立ちの発端だ。
その背景が丁寧に描かれているので
彼の真の人生とは何たるか?を求める旅に説得力が有る。
だからピッピーより活動的で、とにかく歩く
ヒッチハイクも使うが歩けるだけ歩く。
河が在ればカヌーに乗り、国境を越えメキシコまで行ってしまう
そのバイタリティには驚くばかり。
それから又アメリカ大陸を北上し、アルバイトして金を貯め
荒野=アラスカを目指すのだ。
しかし、やっと辿り着いたアラスカの果て
大自然に包まれたシンプルな暮らしは
又、過酷な自然との戦いの日々であった。
学習していたはずのサバイバル・マニュアルは役に立たず
狩猟はするものの保存方法に失敗
野生の植物も食用と毒性を間違い
どんどん痩せてベルトの穴が内側へ増えて行く。
それでも、心は豊か・・・と日記は終わる。
” Into the Wild=青年は荒野をめざす”
彼が、その代償に支払ったものは余りにも大きい。
でも、その生き方は美しく愛おしく観る者の心を揺さぶる。
当然、それには批判も有るだろうが、
いま現代人が失っているものの
何か?を教えてくれる。
此の作品がグルメ映画に入っているのは
究極のグルメとは飢えた後に有るという事なのだろうか?
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