2012年8月19日日曜日


放蕩一代息子&放蕩かっぽれ節

山田洋次vs渥美清・東芝日曜劇場傑作選4作品というのを
レンタル・ビデオ屋で見付け,早速観てみた。
TBSのプロデューサー石井ふく子に呼ばれ、
松竹では、まだ新人監督だった山田洋次が書き下ろした脚本に
当時TVで人気の出始めた渥美清が主演している。
その4作中2本が山田が得意とする”落語ネタ”で
「らくだ」「と「放蕩息子」を脚色したもの。
渥美が後の「フーテンの寅」とは又違う軽さで
徳三郎という、どうしようもない大店の若旦那を演じている。
それにしても本物の落語家(小さん)を前に
粋な江戸言葉を滑舌良く使う渥美の芸には驚かさせられる。
もし彼が俳優でなく落語家に成っていたなら
恐らく、しん朝、談志と肩を並べて居たろう。
山田洋次が狙ったのは古典落語をベースに
江戸庶民の平穏な暮らしの中に
ヤクザや放蕩息子という”はみだし者”を放り込む事で起こる
様々なトラブルに、泣き笑い、そして人の情だ。
それは後年シリーズ化された映画「男はつらいよ」に
受け継がれたのは云うまでもないが
とにかく、此の2作品に窺えるのは渥美清と云う役者の
途轍もないスケールと緻密な表現力そして無限とも思える可能性。
もちろん「男はつらいよ」は素晴らしいシリーズだったが
つくづく”フーテンの寅”で渥美清を終わらせてしまった
日本の映画界や演劇界そして、それ以上を求めなかった
私も含め観客の器量の狭さを感じた。
共演者に石井ふく子ファミリーや山田洋次映画の面々が出ているが
此の頃の渥美のパワー&スピードには、あの若山富三郎すら
着いて行けず僅かに芸達者な西村晃や杉山とく子
そして後に”さくら”になる倍賞千恵子だけが
彼の演技に反応して光っていた。
それに、全く反応が無い(死人だから当然)”らくだの馬”役の犬塚弘は
元ベーシストらしい手足の長い容姿を生かし
瞳をピクリともさせず、かっぽれを踊り切り
歴代の此の役の俳優(中村是好、小沢昭一など)の中で、
私の知る限りベストと云える。

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