2012年7月6日金曜日

ブルースが聞こえる:マイク・ニコルズ
此の邦題を付けた配給会社のセンスには腹が立つ。
「ビロクシ・ブルース」という本当の題の後ろ半分だけ取って
イイ加減に付けたとしか思えない、恐らく映画を観ていないのだろう。
”ビロクシ”とはミシシッピーの新兵訓練所。
太平洋戦争末期、徴兵義務の有った頃、全米各地から
此の地に集められた高校生たちの厳しい訓練と日常を描いた作品だ。
もともとブロードウェイの舞台にかけられた
ニール・サイモンの戯曲をマイク・ニコルズが映画化したもの。
ジャック・レモンの「おなしな二人」等でコメディの得意なニールだが
シリアスなのは自らの入隊体験がベースだからだろう。
その自分と思われる作家志望のユダヤ青年を
マシュー・ブロデリック(「ウォー・ゲーム」「グローリー」)が演じ
見た目は穏やかだが、陰険で非情な軍曹が
クリスファー・ウォーケン(「ディア・ハンター」)
日本では、ありえない軍隊物の演劇が素だから入隊してからの
兵舎内の同僚たちとの確執がメインだが
映画では鬼才マイク・ニコルズ(「卒業」「イルカの日」)の演出で
冒頭、彼らが汽車に揺られて基地に向かう処から始まる。
まだ少年の面影を残す新兵たちの性格描写がテンポ良く描かれる。
その自由な雰囲気は後にクリトファー・ウォーケンの
鬼軍曹に依って、規律という目的で滅茶苦茶にされるのだが
何処か「アメリカン・グラフィティ」や「スタンバイ・ミー」の様な
ユーモアが漂っているのは当時・戦争状況が優勢だった米国の余裕だろう。
とにかく、新兵それぞれに多国籍の米国らしい人種差別や
ゲイ差別の問題は絡むものの、エピローグで

日記を開くたびに思い出す。出逢った時にはワルで憎らしかったが、
別れてみると無性に懐かしくなる友のことを。
あんな友にもう二度と全うことはできない。
短くも光り輝く、人生にとってかけがえのない時だった‥‥‥

と閉じている。
本当に若くて輝いていた青春スター、マシュー・ブロデリックに
絡む、仲間たちの多彩なキャラクターに見事な演技。
そして怪優クリストファー・ウォーケンの大芝居と
、楽しめる要素は盛り沢山だが、それに加えて
此の映画がジャズ映画のジャンルに入れられている程の
懐かしいスイング・ジャズの名曲がB.G.Mとして使われて
それを監修してるのがフランス映画音楽の巨匠ジュルジュ・ドルリュー。
彼のオリジナル・スコアは、一箇所だけで物足りないが
此の使い方はオリバー・ストーンの「プラトーン」と同じだ。
TSUTAYAの980円セールで偶然見付けた中古DVD
なかなか集まらないマイク・ニコルズ・コレクションにやっと入れられた。











3 件のコメント:

  1. 大阪のボボ…2012年7月6日 13:49

    クリストファー・ウォーケン繋がりですが、
    先週中古で買った「ドミノ」という作品で
    いい味を出してました。
    キーラ・ナイトレイで集めようとして買ったのですが、リドリー・スコットの弟、トニ―・スコット監督作品で事実を元にした賞金稼ぎの女性を取り上げたものです。
    既にご覧になられたかもしれませんが、いろんな手法が実験されて、とても面白かったです。
    往年のジャクリーン・ビセットが相変わらず美人だったり、トム・ウェイツが出てたりしてますが見事に仕上げていました。
    それにしても今日の一品には下田逸郎まで出てきて、あらためて勉強になります…。

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    1. クリトリスもといクリストファーですが
      Fatboy Slimの”Weapon Of Choice”で
      華麗な踊りを披露してましたね。
      ナタリー・ウッド水死事件で
      溺れるのを見殺しにしたとか、何かと
      話題の多い人です。

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    2. トニー・スコットは兄リドリーのイギリス時代の
      短編に出演した事があります。
      兄と同じく才能が有り、独特のモダンな編集テクニックを
      持っていて、最初、私はリドリーのボックスに一緒に
      入れていましたが最近、彼で一箱追加しました。
      その「ドミノ」は観ていないので是非みたいです。
      「エネミー・オブ・アメリカ」のジーン・ハックマンが
      良かったですね。

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