2018年11月11日日曜日

「死の追跡」(1973)
TSUTAYAの発掘良品に入っている此の映画は
いわゆるアメリカン・ニューシネマ以降の作品だから
かなりヒネリが効いている。
それも、その筈で原作が、あの監督のサミュエル・フラー。
J・L・ゴダールがリスペクトして「気狂いピエロ」に出演
”映画は戦場のようなもの・・・”の言葉を残している。
物語は西部劇、銃を使わず町の治安を守るので有名な保安官が
突然現れた、銀行強盗団が妻子を殺し逃亡する。
彼はそれまでの平和主義を捨て、単独で、そのならず者集団を
皆殺しにすべく、題名通り”死の追跡”が始まる。
此の保安官をアイルランド生まれの俳優リチャード・ハリスが演じている。
彼は英国の”怒れる若者たち”映画「孤独の報酬」で注目され
70mm大作マーロン・ブランドの「戦艦バウンティ」や
アントニオーニの「赤い砂漠」ペキンパーの「ダンディー少佐」
「テレマークの要塞」「キャメロット」に
晩年は「ハリーポッター」シリーズの魔法学校の校長役
リドリー・スコットの「グラディエーター」の皇帝役が記憶に残る。
その個性的な風貌と演技で世界的に活躍したが
此れは、その初期の作品。
班に一味への怨念だけで、次々と犯人たちを殺してゆく彼に
逃亡先のメキシコの保安官が立ちはだかる。
此の保安官役がアルフレッド・レッティエリ。
彼は「ゴッドファーザー」に出ていたが
その顔も個性的だから、一度見たら覚えてしまうだろう。
「ゲッタウェイ」「マジェスティック」と悪役が多いが
此処では、殺人を犯しても目撃者無しでは
捕らえられないというメキシコの法を守るに一途な保安官役。
此れに、ならず者たちの、ひとり一人が又個性的で
義手の代わりに鉄道のレールを切ってつけている男や
妙に礼儀正しい黒人ギャンブラー。
知能程度の低い”スクールボーイ”というアダ名の男
そして妻子を殺したボス役がロッド・テイラー。
ヒッチコックの「鳥」やアントニオーニの「砂丘」で
どちらかというと2枚目の甘いマスクの彼に
情け容赦もない極悪非道な役をさせているから面白い。
そのボスにメキシコで売春婦をやらされている女がイセラ・ベガ。
ペキンパーの「ガルシアの首」ではウォレン・オーツの相手役だ。
そう、映画ファンなら嬉しくなるようなキャスティングの妙が
此の映画の隠れた魅力。
メキシコの乾いた砂漠の風景を見事に捉えた映像も素晴らしい。
監督のバリー・シアーは此の作品の前
アンソニー・クインと「110番交差点」を撮っているが
此れ以降、映画史からは消えている。










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