2024年11月12日火曜日

三屋清左衛門残日録 -ふたたび咲く花:山下智彦監督作品
藤沢周平の短編を二つ組み合わせた脚本は、いずみ玲。
例によって藩の権力争い騒動に巻き込まれた親子の悲劇を
清左衛門が隠居の身でありながら解決しようとする。
まず主役の北大路欣也は益々市川右太衛門に似て来て
堂々たる押し出しで、脇の相棒の佐伯熊太役の伊東四郎が
だいぶ草臥れて来たのに比べ、隠居には元気すぎる。
まあ、それは兎も角、此の作品キャスティングの贅沢な事!
先ずは話の要、お家騒動に巻き込まれた平役人
柘植孫四郎役に近頃やたらNHKで使われている甲本雅裕。
”京都人のひそかかな愉しみ”でも良い役をやっていた。
此の俳優は二枚目では無い、しん生の落語風に言えば
”可哀そうな国から可哀そうな事を広めに来た人”だ。
だから腕は立つから要人に護衛を頼まれ。それに失敗し
家督は下げられ、病気の母(銀粉蝶)を抱え、女房(清水美沙)には
逃げられ、また命まで狙われる羽目になるのはピッタリ過ぎて
観ている方も辛い。
それを救うのは息子(一ノ瀬嵐)先代・中村勘九郎みたいで健気。
それに絡むのが勝村政信、石井正則、大和田伸也に金田明夫と
それぞれ名前で役どころが分かりそうだが実は、それぞれ
一捻りしてある。
此の憎い演出は鬼平犯科帳などで巧い演出だなと思う時
いつも監督・山下智彦とあるので調べたらナント
あの「関の弥太っぺ」「緋牡丹博徒」「総長賭博」の
監督”将軍と呼ばれた男”こと山下耕作の息子では無いか!
まさにサラブレット。
”関の弥太っぺ”では花を上手にヤクザとカタギの境に置いた
監督の息子は此の作品ではTV画像が大型化しているのを
意識してか舞台になる海坂藩の遠景の百姓の農作業まで
丁寧に取り入れ、季節の移り変わりと藤沢周平の世界を
見事に映像化している。
まだまだ此れから先も面白い作品を作ってくれそう。



 

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