2017年8月12日土曜日

「AMYエイミー」(2011)
アカデミー長編ドキュメンタリー賞の作品をやっと観た。
いやはや、凄まじい映画である。
歌好きのロシア系ユダヤ人の娘の27年の生涯が
赤裸々に記録されている。
よくも此れだけ集めたものだという位、幼い頃から
その悲惨な死まで・・・。

彼女はシンガーソング・ライターであった。
それも自分の生き様をありのままに歌にした。
だから実は彼女の歌に、その全てが描かれていた。
普通の女の子が才能を認められレコード会社と契約し
家庭から独立したとたん、悪い男に引っかかり
麻薬を教えられ、セック&ドラッグの日々。

麻薬で潰れたドスの効いた声は
同じ”ジャンキー”のジャニス・ジョプリンと、よく比較された。
しかしジャニスと決定的に違うのは、彼女の言葉つまり
作詞が、すべて彼女自身を語っているのだ。
ヒモの様な男とのセックスに溺れた生活。
”Black to Black"のブラックとはコカインこと。
"Rehab"とは麻薬中毒治療のこと。

そのメロディーの美しさに、ソウルからヒップホップと
アレンジの斬新さは、時代を先取りして居た。
だから、英国のみならず
米国グラミーの賞も総なめ、アッという間に
歌手というより世界的な大スターと成ってしまった。

コンサートは満員、ギャラも跳ね上がり
その金と名声に群がる亡者どもの中には
先の麻薬を教えた、女たらしの男も戻って来て
何より幼い頃、彼女を捨てて出て行った実の父親も
彼女の保護を名目に、付き纏った。

普通ドキュメンタリーは元夫や家族から名誉毀損で
訴えられない様な構成が多いのだが
此の作品は手加減なく
”愛”の名を借りた彼らの私利私欲の欺瞞性を
ウンザリする位、暴き出している。

稀代の天才歌手は何故27歳の若さで
誰にも看取られず、死ななくてはならなかったのか
勿論、当人の繊細で脆い神経もあったろうが
”誰がエイミー・ワインハウスを殺したのか?”

彼女のプロモーション・ヴィデオは
ゴージャスで映像として完成度が高いものが多いが
此のアジフ・カパデァ監督の「AMYエイミー」には
それらは、どれも敵わないだろう。
何せ彼女の人生そのものがドラマチックなのだから。


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