「ジェーン・エア」(1996)
フランコ・ゼフィレッリの12本目の作品。
イタリアを代表する映画監督ルキノ・ヴィスコンティが
オペラを演出する時、助手として
主に美術や装置を担当していた彼は
映画にも助手として抜擢され「山猫」の
舞踏会モブ・シーン等、任されていたという。
自らの作品でも
「ロミオとジュリエット」や「トラヴィアータ椿姫」と
舞台背景の美しさに時代考証のリアルさが
観るもの全てを魅了するので定評がある。
現代オペラでも”ゼフィレッ監修”と有るものが少なくない。
此の「ジェーン・エア」でも貴族階級から
その使用人の小道具から衣装に至るまで完璧だ。
しかし驚いたのは、そのモダンなキャスティング。
主人公のジェーンに、なんとゲインズブールと
ジェーン・バーキンの間に生まれた娘
シャルロット・ゲインズブールを持ってきた。
当時のお洒落なパリ娘ナンバーワンの彼女に
英国古典文学のヒロインが務まるのか?という懸念は
見事に良い方に裏切られ
彼女の起用で、此の作品に現代性が吹き込まれ
新しい自立した女性の姿が描かれた。
そして彼女は意外な事に当時の衣装や髪型が似合う。
それでも個性的な両親(ゲインズブールにバーキン)
の容貌を受け継いでいるから、不器量な家庭教師は自然(失礼)
しかし彼女が恋をして、徐々に美しく成ってゆく過程は
ゼフィレッリの狙い通り。
終盤の花嫁衣装は、もう溜め息が出るほど。
美しさに、エモーションという人の感動を操れる演出家なのだ。
キャスティングで、もう1つ意外性というか、サプライズが
貴族の主人の影の妻役のマリア・シュナイダー
彼女は「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のヒロイン。
そのエキセントリックな役はハマリ!
エキセントリックと云えば更に
「ピアノ・レッスン」の天才子役アンナ・パキン
ジェーンの子供時代を見事に演じ、もうそれだけで
1作品を見たような感銘を受ける。
彼女たちの演技を引き出したゼフィレッリは
著書「レフィレッリ自伝」に書かれているように
数奇な運命を歩んだ演出家で
それは又「ムッソリーニとお茶を」として映画化された。
とにかく画面の隅々まで美意識が感じられる
彼の14作品の入ったDVD-BOXは私の宝物。
彼ほど”マエストロ”の称号がふさわしい人物は居無い。
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