2016年9月15日木曜日

さすらいのカウボーイ(1971)
「イージー・ライダー」で名優ヘンリー・フォンダの息子から
一躍アメリカン・ニュー・シネマの旗手に祭り上げられた
ピーター・フォンダの2作目は驚く程、地味な西部劇であった。
原題”The Hired Hand”の意味は”雇い人”。
なんのケレンも無く、邦題”さすらいのカウボーイ”も
実に的を得ている。
此の作品ではピーター・フォンダ自ら監督、主演
共演は後にペキンパー映画の「ガルシアの首」で
ブレイクする名優ウォーレン・オーツ。
特筆すべきは、オープニングの映像と音楽。
朝陽か夕陽か川面の煌めきの中
釣をする男に、相棒の沐浴をする姿が
ゆっくりとオーヴァーラップ。
カメラは後に「未知との遭遇」「ディア・ハンター」の
ヴィルモス・ジグモンド。
流れる緩〜い音楽はカントリー・ミュージックの楽器を使った
今で云う、ミニマム・ミュージック。
ブルース・ラングホーンという異色の作曲家。
その音と画の醸し出す見事な映像美には
今、観ても溜息が出てしまう。

物語は、まさに”さすらいのカウボーイ”が
長い間、留守にした家に戻って来る。
妻はたいして歓びもせず、夫を受け入れるが
その間に娘は大きく成り、それなりの生活に戻った矢先
一緒に旅をした相棒の手首が悪い奴らから届けられる。
主人公は此れを見捨てられようか?と
此の男の友情と意地は当時のヤクザ映画と重なった。
行かないで!と目で訴える妻を背に、再び家を出る男。
此れから先はネタバレ
勿論、相棒の仇はとったものの
卑怯な奴らに殺され、家に戻って来たのは、彼の馬だけだった
・・・と説明は最低限、エモーションを無理に高める事無く
総ての場面は淡々と描かれ
観るものが勝手に物語を組み立てるのは
「イージー・ライダー」と同じ。
その新しさは、今でも色褪せていない。
此処に予告編が在るが観たら全部観たく成るだろう。

何故、此の映画を想い出したかと言うと
先日の”マニアの受難”の話で
VHS,Hi-8、DVDうんぬんの前に,Bataという録画方法が在り
当時、此れを発売していたSONYのヴィデオ.デッキは
録画時間が、60分が限界だった。
それは、かれこれ50年近くの前の話なのだが
此の「さすらいのラウボーイ」のTV初オンエア
というニュースに喜んだものの
当然、此の作品は1時間半以上有るので、途中で
2本目のBataテープにチェンジしなくては成らない。
つまり、タイマー予約が効かないのだ。
運の悪い事に、その頃、私に地方ロケの仕事が入り
その時間に自宅に居られない。
それで私は、勤めていた会社の先輩にアパートの鍵を預け
入ってもらい途中でテープを交換してもらう事にした。
律儀な先輩はちゃんと誰もいない部屋に入り
途中CMの時にテープを交換してくれ無事、録画成功!
後でテープを前後続けて観た私は感激したものだ。
そんな苦労をして録ったヴィデオも、今は再生するBataデッキも無く
Bataテープも、いつの間にか何処かへと消えた。
時代が変わればシステムも変わる。
永遠なんてものは無いのだ!ましてや人の心なんて・・・。
ドサクサに紛れて何云ってんのアンタ(笑)。

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