2016年2月21日日曜日


第七の封印(1957)
先に”伝染病映画”のジャンルに此れを入れてしまったが
此の映画を見たのは40年以上も前、新宿のアートシアター。
それも徹夜の仕事明け、始めの5分で寝てしまい
只なんとなく”ペストの映画”という記憶しか無かった。
しかし、それは世界映画史上に敢然と輝くスウェーデンの巨匠
イングマル・ベルイマン監督に大変失礼にあたると
昨夜、改めてじっくりと観賞。
若い時には気付かなかった此の映画の主題”死への恐怖”
そして”神の不在”が、ようやく理解出来た。
まず当時の私を眠らせた、冒頭の静かな北欧海岸が
黒澤明のモノクロ映像に似て、圧倒的に美しい。
時代は中世、主人公は十字軍に参加した騎士(ナイト)
従者を連れて帰省する途中。
目の前に死神が現れる。
それは自分の死を意味するものだから
主人公は死神にチェスを挑み、時間を稼ごうとする。
その旅の途中で、旅芸人一座などに会う。
そのサーカスの雰囲気はフェリーニ映画との共通点もあるが
北欧独自の衣装が、とても興味深い。
しかし、国中にペストが蔓延し
先々の村は死者に溢れ
それを恐れる人々が狂信的な行進を始める。
村人に”魔女”とされた少女は主人公の目の前で
火あぶりにされるが、誰も止められない。
自分の死期が近い事を感じた主人公は
従者や旅芸人たちを妻の待つ、自分の城へと誘うが
その前に彼は、死神との最後の勝負に負けてしまい
その城へ、死神が遂に現れ
否応も無く彼等を連れ去り
彼等に”死の”死の舞踏”と呼ばれる行進をさせる。
それはキリスト教徒には馴染み深くも恐ろしい
死神に取り憑かれた人間の最期の姿。
長い鎌を振る死神を先頭に奇妙な動きで連なる。

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運良く死神から逃れた旅芸人の夫婦だけが
その光景を見たのだった・・・
というキリスト教の教義を元にしたストーリー。
昔、難解と思った、その内容も
私の年齢から、そんなに死が遠い存在で無くなり
また、疫病と言う災いは現代に通じる普遍性があり
死の恐怖に怯える人間の心の救済は
神=宗教へと向かうのも理解出来て来た。
しかし誰にも、いつか死は必ず訪れる。
神は、すべてを救える訳では無い。
死への恐怖心は、神を信じる事で無くなるのか?
果たして本当に神は存在するのか?
科学の及ばぬ宗教世界。
ぶっちゃけて云えば、効くか効かないか
解らない薬(宗教)を、人は何故買う(お布施を払う)のか?
あらゆる宗教に通じる永遠のテーマを描いた此の作品
実に面白くて、40年間ちゃんと観ずに放って置いた私は
だいぶ損をしてしまった様だ。

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