2015年1月15日木曜日

鬼平外伝 老盗流転
どうやら何年か前の正月番組の再放送らしいが
録画しておいたものをやっと観た。
中村吉右衛門の出て来ないやつだが
彼が観たくて此のシリーズを観ている訳ではないので
いっそ、出ていない方が中身が濃く成る。
濃く成ると云えば此の”外伝シリーズ”は
池波の短編を集めているので2時間だと
いつもダレるかクドくなってしまう。
それを此れは監督・石原興の演出が救った。
彼は”必殺”のカメラマンあがり
米国のヤン・デ・ボンが「ブラックレイン」の撮影で名を売り
「スピード」の監督で成功した様なもの。
石原は定評の有る斬新なカメラ・ワークで
物語のテンポにメリハリを付け、飽きさせず
往年の宮川一夫の絶妙なアングルを彷彿とさせる。
飽きさせずと云えば、脚本の金子成人。
彼は向田邦子の後、久世光彦ドラマを継いだ人だが
此の”外伝”シリーズも多く手がけている。
いつもは演出と噛み合ず台詞(セリフ)が
空回りしている事もあるが
此の作品ではキャスティングの良さもあり
台詞すべてが生きていた。
そのキャスティング、いや物語を先に説明しないと
解らないから話すと
悪い親分に付き、殺されそうになった
若い2人の子分が愛想を尽かして江戸を出奔する。
地方に逃れ苦労するが一緒に居ては
捕まり易いと、一本道で
「此れからは道で会っても他人だぜ」と別れる。
此の1人を高橋光臣が鯔背(いなせ)に演じる。
それから三十五年、
盗人だった過去を隠し何故か2人は江戸に舞い戻り
一人は大商人、一人は殺しの手配師に。
此の老盗を上の写真の橋爪功と國村準が演じる。
2人は偶然再開し、一度だけという約束で酒を酌み交わす。
その話の中で橋爪は國村が気が付かず
自分の殺しを請け負っている事を知る。
(橋爪が商人として名前を変えているからだ)
橋爪には年の離れた若い女房が居て、
その女房が殺しを依頼しているのを突き止める。
此の女房役の若村麻由美が色っぽく
又、不幸な生い立ちに、悪いヒモと
その運命(しがらみ)が脚本に丁寧に描かれ
若村が女の哀れさを名演し
カメラが、それをしっかり捉えている。
マキノ雅弘が云う
 「映画は1にホン(脚本)2にシバイ(演技)3にヌケ(映像)
此れが守られて完成する」
木造の日本橋を再現した様な大掛かりなセットを生かした
カメラワークが広重の浮世絵を思わせ見事。
「今度会う時は、あの世かね?」と老盗2人が、
すれ違うストップモーションで終わる最後が巧い。
今、時代劇の衰退の流れに
「おいチョット待て、時代劇は死んじゃ居ねえぜ!」と
本気でスタッフ・キャストが取り組んでいる姿が見える様だ。

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