2014年6月19日木曜日

日本暗殺秘録
此の映画は1969年公開された時
映画館で観て、エッ此んな映画有り?と思ったが、
今度は約40年ぶりにレンタル・ヴィデオ屋で此れを見つけ
なんで此れがDVD化されるワケ?と叫んでしまった
という程の“危ない”此の映画の中身を
皆さん御存知か?
ポスターには当時ヤクザ映画のスター
鶴田浩二、高倉健、若山富三郎に千葉真一
そしてトップには御大こと片岡千恵蔵の名前まで。
此のオールスター並びは普通「忠臣蔵」だろう。
それがそれが異端も異端
幕末から明治、大正、昭和に至る4代の暗殺史なのである。
始めてのカラー長編アニメ「白蛇伝」(1958)を製作し
小学校の授業の一環として映画館で観賞、
日本中の子供達に可愛い夢を与えた筈の
社長・大川博は、その11年後、何にトチ狂ったか
歴史思想家・鈴木正の「暗殺秘録」の映画化を
東映オール・スターキャストで中島貞夫に命じた。
中島は”エロ物”の「くの一忍法帖」でデビューしたばかり
エロの次にテロか?と中島が云ったかどうかは知らないが
それでも「893愚連隊」等の斬新な演出が評判だった。
まず、彼は当時ヤクザ映画のシナリオを沢山手がけていた
盟友の笠原和夫を誘い、有名な「血盟団事件」をメインとした
世にも奇妙な脚本が此処に出来上がった。
思えば幕末は”天誅”という名のもと暗殺の繰り返し
明治維新までに優秀な人材(政治家)は
坂本龍馬を始めとして悉く殺されてしまった。
日本の近代化は血にまみれていたのだ。
此の作品では映画冒頭「桜田門外の変」が
暗殺の始まりとしている。
若山富三郎が血の滴る井伊直弼の首を持って
雪の中を歩くプロローグショッキング。
続く「紀尾井坂の変」私は知らない事件だったが
大久保利通が馬車に乗ったまま襲われる。
此の暗殺者を唐十郎と状況劇場の役者達が
犬の様に馬車を追い、猿の様に集団で襲いかかる奇妙な映像は
悪夢の様で目に焼き付いて離れない。
大隈重信襲撃」「星亨暗殺事件」「安田善次郎暗殺事件」と
テンポ良く映画は畳み込み。
「ギロチン社事件」では当時、青春スターだった
高橋長英が暗殺資金獲得のため銀行員を殺害する
古田大二郎を演じ、その心の揺らぎが見事だった。
古田の此の危ういキャラクターを脚本の笠原は後に
「仁義なき戦い・広島死闘編」で北大路欣也にやらせている。
そしてメインの「血盟団事件」は主犯の小沼正を
千葉真一が、ひたむきに演じ、憧れる右翼思想の井上日召
片岡千恵蔵が、まるで宮本武蔵が如く悟りきって演じ
影響された千葉が修行僧の様に痩せてゆく有様が凄まじかった。
結局、多くのテロは若者が思想家もしくは宗教家に操られ
催眠術をかけられた様に
自らの命と引き換えに相手の命を奪う事なのだ。
それが国を憂えた純粋な心であるが故に空しく哀しい。
続く「相沢事件」では、高倉健が北一輝の思想に
影響された陸軍少佐を演じ
単身で軍務局長:永田鉄山少将を斬殺する。
軍服を着ているが殆どヤクザ映画と同じ
「死んで貰います」の世界で、”健さんカッコイ~”と
ますます此の映画は”テロ讃歌”の呈をなして来て
最後の「二・二六事件」に至っては
鶴田浩二が青年将校のリーダー役だから
あの三島由起夫と雑誌で対談した時、彼が
「いざという時は私は駆けつけます!」と云ったとか
(でも、あの防衛庁には駆けつけなかったな)
その鶴田だから本気で演じていて怖い。
彼の軍歌を大きなスピーカーで流し
都内を黒いバスで走り回る方々に此のDVDは
バイブルかマニュアルに成ってしまうんでは無いか?
と真面目に心配する私。
公開時、オールスター・キャスト上映時間142分の大作と云うのに
東映社長・大川博の思惑は外れて、観客大動員はまま成らなかったが
此のDVD、今の時代に、忘れかけた日本の”陰”の歴史を学ぶには
小・中学生にはチト早いが、高校生の日本史の教材に
使ったらどうだろう?・・・なんちゃって(笑)

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