2014年4月21日月曜日

市川崑の世界
長命の映画監督というと100歳まで生きた
新藤兼人には敵わないが
此の市川崑も日本映画の中では長命だった監督である。
スタートはアニメーション映画
だから画面構成がデザイン感覚である。
有名な、画面を直角に構成するタイトルは斬新で
大学がデザイン専攻だった私は憧れたものだ。
ある映画マニアの友人が云うには
「どんなに優秀な監督でも傑作は、せいぜい2本が限度」
でも彼の場合、全作品が水準の高いものだった。
それでも、昨日のクロサワとミフネの関係の様に
ハネムーンの時期は永遠ではなく、何処かでバランスが崩れる。
彼の場合は妻であり脚本家であった和田夏十とのコンビが
それであった。
夫が撮ったラッシュを観て、撮り直しを命じる妻に
素直に納得して、再撮影をする二人は、その片方が
無くなるまで、まさに絶妙の関係だった。
市川の鋭いデザイン感覚に、和田の練り込まれた簡潔な脚本
それで出来上がった作品は
日本映画史上、唯一無比の映像美となり
古くは増村保造、田中徳三、そして伊丹十三、和田誠と続く
沢山のフォロワー=後継者を、未だに生んでいる。

私がCM業界に入ったばかりの頃、恐れ多くも
此の巨匠を撮るチャンスに恵まれた。
何とか彼を演出する糸口を掴もうと
「私はイチカワさんの映像の青い色が好きです!」と云ったら
「うん、僕は、あの青が出したくて大映に移ったんだよ」と
真面目な顔で答えてくれた。
黒澤明と共有したカメラマン宮川一夫が開発した
大映イーストマン・カラー独特の美しい青
今でも彼の作品を見る度に、その時の事が思い出される。

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