2024年3月10日日曜日

「第三の男」;キャロル・リード監督作品
BS放送大学で放映された此れは世界映画史の中でも屈指の名画。
それを野崎 歓教授の解説で観れるなんて!
先ずは此の映画を製作したプロデュサー2人
アレクサンダー・コルダはハンガリー人
早くから監督として映画制作に取り組んでいたが
母国が共産圏に組み込まれるを避けてオーストリアに
活動の拠点を移していた。
だから此の作品の舞台、ウィーンは彼の得意とする舞台。
その後、ハリウッドに渡り、風と共に去りぬの大プロデューサー、
デヴィッド・O・セルズニックと共同制作で
イギリスの作家グレアム・グリーンに
戦後の混乱したウィーンの脚本を依頼
出来上がったのが、此のシナリオという訳。
監督のキャロル・リードは既に彼と組んで
邪魔者は殺せ、落ちた偶像とお互いに才能を認める仲。

此の映画は所謂フィルムノワールという暗いサスペンス映画
客を呼べないのを、流石のセルズニックが
市民ケーンのオーソン・ウェルズとジョセフ・コットンの
コンビを復活させ、更にイタリア女優アリダ・バリを呼び寄せ
そのトライアングルは完成した。
でも此の映画の主役はウィーン
民族楽器ツィターが全編鳴り響き
戦後ベルリンの様にソ連、アメリカ、英国フランスに
分割統治され破壊されて迷路になった街。
此の街を、その昔ドイツ表現主義映画F・W・ムルナウの
吸血鬼ノスフェラトウを思わせる怪しい光と影で捉えたのは
カメラマンのロバート・クラスカー
更に登場人物たちの表情は不安定な斜めのカメラフレーム。
それらは後々の映画に多くの影響を与えた。
クライマックスの地下道の映像など、さながらSF映画
もう何度も観た筈なのに今回印象に残ったのが
追い詰められて地下道から抜け出そうと
マンホールから出したハリーの指が
さながら舞い上がろうとする2匹の蝶に。
そして何より、断末魔のオーソン・ウエルズの顔!
ジョセフコットンに撃たれそうになり甘える様に
此れ以上の哀しい表情は無いという最期。
優れた監督は、名優でもあったのだ。
誰もが映画のラストシーンのNo.1に上げる
枯れた並木のパースペクティブの奥から現れ
手前に消えるヒロインの無表情。
やっぱり此れは世界名画ランキング1位かな?


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