黒澤明の映画音楽#16
「乱」(1985) : 武満徹
「影武者」は此れを撮るための経費節減作品という筈だったが
又もや、それ以上のエキストラに馬、鎧兜と巨大セットに
長期ロケと製作費が掛かった合戦絵巻映画。
それでも主役に又、仲代達矢を起用、シェークスピアの”リア王”を
毛利元就の”3本の矢”の話に絡ませて例によって脚本は
小国英雄、井戸雅人とクロサワのトリオ。
準備に時間をかけたというだけあって練り上げられた脚本は
現代に通じる、戦争をし続ける人間の愚かさを俯瞰的に描いている。
しかし脚本の面白さを生かし切れる俳優不足。
誰それとは言わないが、此の台詞をちゃんと言えてたら
名場面になる筈の場面に見事に肩透かし。そう言えば
此の頃から日本の映画に良い俳優が居なくなって来た。
いや、それともクロサワの演出力が落ちて来たか?
以前の黒澤作品に見られる様な感動は薄い。
何方にしても海外でのワダミエの衣装や美術のジャポニズムへの
高い評価とは裏腹に、日本映画最高額と膨れ上がった
製作費は回収出来なかった。
さて此の作品の音楽だが
「どですかでん」の武満徹、再度登板。
作品の時代背景から能狂言の楽器をアクセントにして
マーラーもどきの交響曲がレクイエム風で映像に深みを出しているが
世界のクロサワ、世界のタケミツの録音現場は”乱”以上に
激しいものがあったと伝えられている。
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