2021年11月15日月曜日

「男はつらいよ・純情編」(第6話)

此の作品はシリーズの中でも傑作との呼び名が高い。

まず渥美清が憧れていた森繁久弥との競演が映画の冒頭にある。

伏線として夫に愛想を尽かした妻(宮本信子)が

子供を連れて故郷に帰るのを寅次郎が送ってきて、その父親(森繁久弥)と出会う。

父親は娘に帰れと。帰るところがあると思うから我慢ができないんだ

お前が駆け落ちしてでも一緒になった男なら

何処か良いところがあるんだろうと諭す。

これを聞いた寅次郎はそうだ!帰るところがあると思うから

我慢ができないんだ”

と納得するも結局柴又が恋しくて帰る。

此処で森繁は極力抑えた演技をしている。まるで志村喬の様だ。

そして戻った柴又で、やはり夫から逃げてきた人妻(若尾文子)に

会ったら、おいちゃんも、おばちゃんも寅が恋をしてしまうのが

分かっているから早く帰そうとするのに、

寅は怒り俺はもう此処には戻らねえよと出て行こうとする処で

若尾文子に会い、そのまま居座る。

それからは此のYouTubeに概ね出ている通り、

町医者・松村達夫との絡みが腹が捩れるほど笑わせる。

(此のすけべ医者役を森繁がやったら、又違う面白さが出たろう)

おいちゃんの森川信が亡くなり代わりに松村達夫が起用されたが

松村の持つインテリ臭さが下町の団子屋の親父には向かなくて

早めに下元勉に交代した。

俳優にはそう演技では出ないらしさというやつが有るのだ。

それと此の作品には珍しく寅というキャラクターのイイ加減な部分が出てくる。

タコ社長から独立したいヒロシと双方から説得を頼まれた寅は

どちらの言い分も分かり、何とも曖昧な役割しかできない。

此のシリアスな脚本はシリーズの中でも浮いている様に思える。

ラストに宮本信子が柴又に現れ、とらや屋から故郷の父親への電話で

再び森繁久弥が登場するが、

此の場面でも監督・山田洋次は彼の背中だけ、

そして名優・森繁久弥クローズアップで終わる。

此の作品、私が大好きなのは笑いの均衡が

実に良く取れているからなのだ。


 

0 件のコメント:

コメントを投稿