此の監督は夭折(45歳没)したので映画ファンでも、
その作品を未見の人は多いだろう。
「幕末太陽伝」「しとやかな獣」「雁の寺」と
日本映画史に残る傑作を残している。
此の作品は山崎豊子が小説家になる前、新聞記者時代に
俳優・森繁久弥に生原稿を預け、それを徹夜で読んだ彼が
菊田一夫に戯曲を依頼、芸術座の舞台にしたものを
更に川島雄三が映画化したものである。
浪花の昆布商人の少年時代に始まり
戦前戦中戦後と激動の時代を”根性”で生き抜いた男と
それに連れ添った妻、そして子供たちの物語。
どうやら山崎豊子の生家の父親の話らしい。
それを山崎から託された森繁久弥が見事に演じる。
何しろ主人公と、その息子を同画面合成なのだから
此の宝塚映画の特撮技術は驚嘆に値すると共に
森繁の二役の演じ分けが素晴らしい。
前半の軽妙さに後半の呆け具合、そして息子役での
戦後アプレゲールの新・人類加減。
此の頃の森繁の芝居と言ったら、
もう、唸ってしまうくらい面白くて凄い。
それに絡むのが中村鴈治郎、山茶花究、そして
女房役の山田五十鈴と乙羽信子が、
その晩年まで老け役で付き合う。
もう日本映画の名優が揃っているのだ。
そこには、弟子の今村昌平が彼に学んだ昭和史がキッチリと描かれ
あの時代と人間との関係が浮き彫りにされている。
あの渥美清が、若い時から目標にしていたのが森繁久弥。
時々、彼に森繁の芝居の影響を感じるが
来週は二人の競演の寅さんがオンエアされるのが楽しみ。
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