(久しぶりにDVDを観てチョイと感動したので長め)
此の変わった題名の映画はアンリ・ベルヌイユ監督作品
フランスを代表する新旧大スター、
ジャン・ギャバンとベルモンドの競演。
ベルヌイユ監督とジャン・ギャバンは「ヘッドライト」で、
中年トラック運転手と国道沿いのカフェのウエイトレスとの
道ならぬ恋を描いた渋い名作があるる。
後のドロンと「地下室のメロディ」等のアクション物と違い、
此の作品ではノルマンジー海岸近くの寂れた港町のホテルの経営者と
スペインから此の町の寄宿舎に預けた小さな娘の様子を見に来た流れ者
ベルモンドとの、心の触れ合いを描いた温かく切ないドラマとなっている。
冒頭、ドイツ占領下の町のBARでギャバンが
ヘベレケに酔い帰る途中、連合軍の爆撃に遭う場面の激しさがラストに
彼らが海岸で打ち上げる花火が、戦前戦後に呼応する良く出来た構成。
その火薬の膨大な量に、男盛りの監督ベルヌイユの勢いが感じられる。
ギャバンは上海にいた軍隊時代の過去が忘れられず、
ベルモンドはスペインで闘牛士をやっていた過去を持つ。
一方ギャバンは、戦争が終わるとピタリと酒を辞めていた。
この第二の人生をどう過ごすべきか?迷っている二人が
父と子、兄弟の様に気が合い再び飲み始める。
題名の謂れ”冬の猿”とは、ギャバンが話す中国の寓話。
冬になって餌の無くなった猿は人里に降りてくるので
村人は餌をやって山へ返すと言う。
そのやりとりが、当にフランス映画の洒落た男同士の会話で、先に観た
ベルモンドとリノ・ヴァンチュラ競演の「太陽の下の100万ドル」しかり
監督アンリ・ベルヌイユの”男の世界”が楽しめる。
楽しめると言えばベルモンドは闘牛士あがりと言うことで
フラメンコの振付けや、車を相手に闘牛までの大サービス。
本当に彼は起用な俳優だったんだなあ。
音楽のミシェル・マーニュは当時、「太陽は傷だらけ」や
「戦士の休息」等の人気作曲家。
城を購入スタジオまで建てエルトンジョンやボウイなどの
レコーディングに使われている。
この映画ではギャバンの上海時代のイメージにオリエンタルで
キャッチーなメロディーが効果的に使われているし
ベルモンドのダンスにはフラメンコのBGMと遊んでいる。
そのミシェル・マーニュも、若くして自殺。
監督アンリ・ベルヌイユも81歳で亡くなり
ギャバンは78歳、ベルモンドも先日亡くなったばかり
それでも此の映画にはフランス産のワインやブランデーの香りが
たっぷり漂って楽しめる。
映画はいつでも口開けのボトルだ!
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