2021年1月16日土曜日

「人生劇場」のDVD2本ふた晩続けて観た。

人生劇場という作品は尾崎士郎の自伝的大河小説で有る。

青成飄吉という自らをモデルとした主人公の青春を

彼の周りにいた侠客たちとの関係で描いている。

元々は新聞の人気連載小説だったから

これまでに何度も映画化されている。

此の2本は東映で鶴田浩二が飛車角役で主演している。

まず此の作品が生まれた時代背景を話そう。

それまで御大と呼ばれた

片岡千恵蔵、市川右太衛門のシリーズ物や中村錦之助主演の子供向け時代劇

それに美空ひばりの歌入り時代劇が下火になり、

第二東映という2本立て用映画も当たらなく

経営状態も危なくなっていた東映本社に

京都から岡田何某という人物が呼ばれ、

この企画が立てられ、同じ京都東映から、

マキノ雅弘の弟子で、スターの演出が上手い監督が起用された。

沢島忠監督作品「人生劇場 飛車角」(1963)

原作では早稲田の学生・青成飄吉に

まだ侠客という生き方が生業としてあった時代の

最期の侠客ともいうべき吉良常と飛車角を絡ませ、

歌詞にも有る様に義理と人情の此の世界~を描いた・・・筈だが、

男だけで世の中は生きられぬと女が入って来て

その男女の中に、もう一人の男が混ざって話はややこしくなる。

その男女は男は飛車角こと鶴田浩二、

女は女郎あがりの、おとよに佐久間良子。

佐久間は間違って女優になってしまった様なお嬢さん。

此の女郎の汚れ役は二の足を踏んだらしいが

当時、東宝から移籍して来た絶世の2枚目の鶴田浩二の相手役に

清水の舞台から飛び降りて体当たり演技。

それまで岸恵子などとの浮名を流して来た女優キラー鶴田浩二に

文字通りハマり、その熱々ぶりに撮影現場スタッフは

当てられっぱなしだったと。

70mm大作「クレオパトラ」のリチャード・バートンと

エリザベス・テイラーが、監督のカット!を無視して

ひっつきっぱなしと同じだ。

その艶かしさは、映画の早い場面で

ちゃんと映像に定着されているが映画の面白い処。

でも、知らなかったとはいえ飛車角・鶴田の子分・宮川と、

ふた股になってしまう女おとよ役の佐久間良子は、

流石に健さんの宮川とは盛り上がってないのも映像は正直。


とにかく後のヤクザ映画の定番になる

ラストの凄惨な殴り込みの修羅場。それもこの作品のポイントで、

それまでの東映時代劇は"チャンバラ"で刀で切っても、

血が飛び散らなかった。それが時代の流れでリアルな殺陣に。

それは暴力の舞踏まさに情念とも言うべきものを生み出した。

そして男と女と男の止むに止まれぬ慕情を、

雨や風そして当時の町の灯りと情緒をたっぷり盛り込んで描いた。

監督・沢島忠は、ひばりや錦之助のお抱え監督でない事を証明した作品と言える。

付け加えると此の映画で重要な吉良常役を演じたのが月形龍之介。

彼は沢島忠を映画界に呼んだ俳優。

戦前からのスターで東映時代劇の悪役を一手に引き受けていた名優。

その彼を此の重要な役に据えたのが沢島の恩返しなら、

それに答えた月形の深みのある吉良常が居てこその作品。

まさに義理と人情の世界。

此の映画は大当たりして、飛車角は続・新と計3本。

東映はヤクザ映画という路線を鶴田浩二に高倉健の二枚看板でシリーズ化して

TVにとられた観客を映画館に呼び戻した訳である。

とりあえず今日は此処まで、

明日は内田吐夢監督の「人生劇場 吉良常と飛車角」


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