「天国は待ってくれる」(1943)エルンスト・ルビッチ作品
此の監督の名を知っているのは
相当映画の好きな人か、可成りのお年寄りだろう。
以前にも此のサイトでグレタ・ガルボ主演の名作「ニノチカ」を
紹介したと思うが、その監督だ。
此れは彼の始めてのカラー作品。
そう戦前にハリウッドは、もうカラー作品を撮って居たのだね。
エルンストは名前の通りドイツ出身、
既に祖国で名作と言われる作品を発表して居たが
早くから、その才能を買われ、ハリウッドに招かれ
マレーネ・デートリッヒや先のガルボ主演の作品を作る。
得意なジャンルは軽快で洒落たラブ・コメディー。
そのスタイルは弟子で同じ国出身のビリー・ワイルダーに
受け継がれたと言えば分かり易いか。
此の映画、始まりは地獄の一丁目というか
閻魔様の前に引出された死んだ男から始まる。
勿論、洋画だから閻魔様も少し怖い顔だが
三揃いのスーツを着こなしてダンディだ。
彼が、此の死んだ男を、このまま地獄へ落とすか?
天国へ送り返すか?
まずは、お前の話を聞こうじゃないのという物語。
それで始まるのが主人公の物語。 赤ん坊の頃から乳母に興味をもち、
少年時代はあちこち女の子を口説きまくり、
くそ真面目な従兄の婚約者に一目惚れして略奪婚。
それでも浮気の虫は治らず、
呆れた妻は子供を置いて実家へ帰ってしまう。
それを又追いかけてヨリを戻しと、目紛しく話は展開するが
主人公のドン・アメチーの伊達男ぶりがなんとも粋で、
とても「コクーン」(1985)で宇宙人のプールで若返り、
踊りまくる爺さんとは思えない。
そしてヒロインのジーン・ティファニーの美しさと言ったら!
主人公ならずとも溜め息が出るほど。 芝居も確かで、
自分の病を知りつつ、夫とダンスを踊るシーンに泣ける。
脇の役者も、みな達者な演技でテンポよく最後まで飽きさせない。
流石、ビリー・ワイルダーの師匠の演出。
彼の家に居候していた弟子のビリーの話によれば
当時、監督ルビッチは映画の製作中で、
妻か愛人か分からないが"ナニ"した直後、
シャワーを浴び、心臓発作で亡くなったと暴露している。
それは、此の映画の主人公が晩年寝たきりになり、
不細工な看護婦の検温を嫌がるが、
交代した美人看護師にそれを口に入れて貰った途端、
興奮して死ぬラストと重なって笑える。
ルビッチ享年55歳であった。
0 件のコメント:
コメントを投稿