「黄金」(1948)
米国映画の巨匠ジョン・ヒューストン監督の初期作品である。
それでも、その才能が既に並大抵のものではないのが分かる。
舞台は1920 年代のメキシコ、その地を選んでいるのは
彼は当時の”赤狩り”を嫌ってハリウッドから移住したから。
此の映画にリアリズムがあるのは当に”土地感”とも言える
メキシコの文化や風習を脚本に織り込んでいるからだ。
その脚本だが、あの”ボギー”事ハンフリー・ボガード扮する
アメリカ人が国境を越えてメキシコで食い潰している所へ
金の採掘をしている老人と出会い、渡りに船と山奥へ向う。
此の老人役が、なんと監督の実の父親ウォルター・ヒューストン。
(此の作品で彼はアカデミー&ゴールデングローブの助演賞)
これが何とも良いキャラクターで話を面白くする。
此れに、もう一人の若いアメリカ人が参加し計3人で
苦労の末、金鉱を掘りあてる。
採掘した金がそれなりの量になった処で
更に金を狙うアメリカ人が現れ3人は慌てるが
その時、メキシコの山賊が彼らを襲い撃ち合いになりと
荒野を舞台に西部劇の様になるが
あくまでも此の映画は人間の欲を描いた人間ドラマ。
まだハードボイルド以前の”ボギー”は欲に目が眩んで
呆気なく殺され、残された善意の者たちに幸せが訪れる
・・・といった結末の筈だがラストに又ヒネリがあってと。
とにかく、展開が面白い。
そして、映像は白黒なのにメキシコの熱く乾いた風土が
観ている観客の顔まで汚れそうな具合。
金槐を手に入れてからの若い二人のやり取りは
あの黒澤明の「隠し砦の三悪人」の千秋実と藤原鎌足に
そのまま使われているはクロサワファンなら分かるだろう。
兎に角、此の作品は映画の”古典”として
これまで沢山の映画に引用されている筈だ。
付け足すと映画の序盤に”ボギー”が
”同じアメリカ人に金を恵んでくれ!”と3度もせびる相手
白いスーツの男役は監督ジョン・ヒューストン自身。
(娘のアンジェリカ・ヒューストンも女優、やはり俳優一家なのだ)
彼はポランスキーの「チャイナタウン」では物語の鍵を握る
フェイ・ダナウェイの父親役を怪演していた。
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