2019年3月10日日曜日

「大砂塵」(1954)
此の映画は昭和29年に公開されている。
幼な心にラジオから”ジャニー・ギター”のメロディが
流れていたのは何となく記憶してる。
でもビクター・ヤングの主題歌がヒットした割には
映画自体は日本では、あの「シェーン」ほど当たらなかった。
西部劇としては全くの異色作だったからである。
それでも、此の映画がフランスのヌーヴェルヴァーグの監督達に
評価が高いというのは一度観て貰えば分かるだろう。
まず題名の”ジャニー・ギター”は
それと名乗る流れ者の事。
馬に乗り、ギターを背負っているのは笑ってしまうのは
小林旭の”渡り鳥シリーズ”の原型だから。
ある鉱山の町の酒場にジャニーは馬を繋ぐ。
そこは、気の強い女主人が経営していて
彼とは訳ありの関係と匂わせる演出。
そう、此の女主人をジョーン・クロフォードが
颯爽と演じていて彼女こそが主役なのだ。
彼女はジャニーと別れた後もダンシング・キッドという
無法者とも付き合っているという
フランス人が喜びそうな実存的な女性。

此のダンシング・キッドに横恋慕している彼女より
更に気性が激しい女牧場主がいて、話がややこしくなる。
此の女二人の憎しみ合いが映画のコアだ。
そう女二人の憎しみ合いといえば、ジョーン・クロフォードは
ベティ・デーヴィスとの「何がジェーン起こったか?」が有名だ。
彼女の濃い眉には戦う女のイメージが良く合う。
そこでは2m近い大男の”ジョニー”こと
スターリング・ヘイドンも霞んでしまう。

此のスターリング・ヘイドン、実は此の後
あのスタンリー・キャブリック監督に気に入られて
「現金に体をはれ」「博士の異常な愛情」
コッポラの「ゴッドファーザー」アルトマンの「ロンググッドバイ」
更にはベルトルッチの「1900」と凄い俳優なのだが
まあ、ジョーン・クロフォードには負けてしまうね。

そんな大胆な演出をしたのはニコラス・レイ監督。
有名な彼の作品はジェームス・ディーンの「理由なき反抗」
ジェフリ・ハンターの「キング・オブ・キングス」と
苦悩する青春を描かせたら巧い。
此の映画でも、ターキーという若いカウボーイの弱さを
実に丁寧に描いている。
そう他の登場人物全てに、それぞれ肉付けがしてあり
それはオーケストラ団員それぞれの楽器が
ハーモニーを生み出す様な見事な演出なのだ。

そしてカメラマンがハリー・スタラドリング!
彼は早くから渡仏し「外人部隊」「女だけの都」と
フランス映画の名作に参加し、米国に戻ってからも
「スミス夫妻」「欲望という名の電車」と異色作
ミュージカル「マイフェアレディ」と押しも押されぬ
ハリウッドの名カメラマンだ。
此の作品でも、まさに西部劇は此れだ!と言わんばかりの
”ヌケ”の良い映像を作り、
”フロック”と呼ばれる本筋とは関係の無いショットを
ニコラス・レイの斬新な編集に与えていて
将来、監督を志す学生には此の映画、絶好の映画教材だろう。







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